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東洋医学のしくみ6章 東洋医学の現状と将来 >

現代医学と東洋医学
【げんだいいがくととうよういがく】

現代医学と東洋医学の長短

◆現代医学は「扶正」が弱い
漢方薬は長く飲まなければ効かない」―-この考えが間違いであることはすでに何度も説明しました。こういう見方が定着した背景には、現代医学が抗生物質の発見などで、感染症や急性症状の治療に飛躍的な効果をあげるようになったことがあります。いきおい漢方薬は慢性的な病気にしか使われなくなり、長く使わないとだめというイメージができてしまったのです。
 このことを逆に考えると、現代医学では慢性疾患に対して根本治療をしたり体質の強化をはかるといった、東洋医学でいう「扶正」を行うための技術開発が遅れていることに気がつきます。
 たとえば、病後の回復期などに医師がよく「あとは栄養をしっかりつけて」などといいます。しかし、何をどう食べるかという指示は出しません。その点、東洋医学では「薬食同源」という漢方薬と同じ考え方をもとに食物の薬効も区分していますから、不足している正気の違いに応じて「医学的」な食養生の指示ができます。
 現代医学における輸血とかホルモン注射などを「補法」か「瀉法」かに分ければ「補」に属するので、扶正の技術がまったくないわけではありません。しかし、慢性の症状をじっくり根気よく調整していくというような技術は弱いのです。
 また、症状が顕在化していない状態では輸血やホルモン注射をすることはありませんから、「治未病」の技術も遅れています。

◆究極の「瀉法」は手術にゆずる
 現代医学の方がすぐれている分野では、やはり感染症に対する治療を第一にあげるべきでしょう。細菌などによる感染症を治す場合に、抗生物質を使うよりも早く治せる方法は東洋医学にはありません。
 現代医学は、「扶正」の技術に遅れが見えるものの、逆に邪気を取り除く邪」の技術には長じているともいえます。わかりやすい東洋医学と現代医学との違いに「手術をするか、しないか」がありますが、東洋医学の立場からいえば、現代医学の手術こそ最大の「瀉法」なのです。

現代医学と東洋医学融合の必要性
 中国では20年以上も前から「中西結合」という言葉で、現代医学と東洋医学の融合が叫ばれています。日本でも少しずつそういう声が出てきてはいるものの、多くは現代医学の医師が漢方薬や針など東洋医学の道具を採用しているだけというのが現状です。しかし、東洋医学の道具は東洋医学の診断に合わせて用いてこそ、膨大な経験を生かせ、副作用も少なくできるのです。
 東洋医学と現代医学をうまく融合させるには、まず両医学の独自性を尊重して、一人の患者に両方の診断を行う必要があります。東洋医学を積極的取り入れている現代医学のある医師は「1+1=2にはならないが1・5にはなる」と言います。独自性を尊重してはじめて融合の意味があるのです。
 そのうえで「現代医学だけで治療」「東洋医学だけで治療」「現代医学を中心に東洋医学で補完」「東洋医学を中心に現代医学で補完」のどれが適切かを判断してから治療に進むのが理想です。そのためには、日本の医学教育の中で、両医学の基本的使い分け程度は最低限教えるべきではないでしょうか。




日本実業出版社 (著:関口善太)
「東洋医学のしくみ」
JLogosID : 5030105


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 日本実業出版社「東洋医学のしくみ」

出版社:日本実業出版社[link]
編集:関口善太
価格:1,620
収録数:115
サイズ:20.8x14.8x1.6cm(A5判)
発売日:2003年7月
ISBN:978-4534036179

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