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東洋医学のしくみ3章 「証」による診断と治療 >

虚証と実証
【きょしょうとじつしょう】

病邪が旺盛なのか/正気が不足しているのか

◆虚・実の分かれ目
 証の分類の一つである「虚証」「実証」は、漢方薬局などでもよく使われるので、言葉だけは知っているという人も少なくないでしょう
 簡単にいうと、病気の原因になる病邪の勢いが盛んで体の防御力が対抗しきれずに発症した病気が「実証」、病邪はあまり盛んでなくても気・血・津液が不足していたために発症した病気が「虚証」です。
 注意してほしいのは、この場合の病邪は外から人体を襲う外感だけでなく、気・血・津液の異常、食事の不摂生などの内傷も含まれるということ。つまり、病邪の力が旺盛で病気になったのか、あるいは体の力が弱っていて発病したのかだけが虚・実の分かれ目になります。
 カゼを例にするとめったにカゼをひかない元気な人が猛烈なインフルエンザダウンしたというケースだと実証、他人がカゼをひかないようなクーラーの冷気でもすぐにカゼをひいてしまう人の場合は虚証と考えられます。
 また、年末年始の暴飲暴食がたたって胃腸をこわしたというような場合は、明らかに食べ過ぎによる病邪(「食滞」という)が原因と考えられるので実証、しかしこれを繰り返しているうちに慢性的に食欲が落ちて、少し食べただけでも戻してしまうというのなら、食べ物よりも脾胃機能の低下の方が問題なので、虚証ということになります。

◆体質のイメージとは区別すべき
 実証は虚証と比較した場合、急性の病気が多く、高熱とか激しい下痢といった一過性の強い症状になるのが一つの特徴です。一方、虚証は実証と比べてさほど激しい症状が出ないかわりに、慢性化しやすいという特徴があります。
 虚と実という文字から、虚弱体質のような人がかかる病気が虚証で、脂ぎった精力絶倫タイプがかかるのが実証というイメージがあるかもしれません。実際「実証タイプ・虚証タイプ」という言い方もあります。
 たしかに、ふだんから虚弱そうな人の方が体力のある人より虚証を発症する確率は高くなりますが、外見の先入観だけで判断すると、誤診につながることがあります。虚弱な人が実証を発症することもあるし、その逆もあるからです。虚証と実証の判断には、見た目の体質より病状そのものが優先されるのです。

◆虚・実に気・血・津液が付く証
 病邪と気・血・津液からだけで大きく分けて判断することからもわかるように、実証・虚証はいろいろなタイプの病気を含む、いわば一つの症候群を指す言葉です。したがって、患者の様子を診察して実証か虚証かの判別がついても、それだけでは先に進みません。
 実証の場合、旺盛になっている病邪を除去するために、その病邪の種類を判断する必要があります。そこまでいかないと弁証から論治へは進めないのです。
 虚証の場合も同じで、気・血・津液のどれが不足しているのかを見きわめる必要があります。気が不足している虚証を「気虚証」、血なら「血虚証」、津液なら「津液虧損証」といいます。さらに臓器の気が不足しているような場合は部位を特定し、心の気が不足しているなら「心気虚証」、肝の血が不足しているなら「肝血虚証」と、証を決めていくことになります。




日本実業出版社 (著:関口善太)
「東洋医学のしくみ」
JLogosID : 5030059


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 日本実業出版社「東洋医学のしくみ」

出版社:日本実業出版社[link]
編集:関口善太
価格:1,620
収録数:115
サイズ:20.8x14.8x1.6cm(A5判)
発売日:2003年7月
ISBN:978-4534036179

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