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東洋医学のしくみ3章 「証」による診断と治療 >

表裏と寒熱
【ひょうりとかんねつ】

証の重複・組合せ

◆体表面が「表」、内部が「裏」
 八綱弁証のうちの「表裏弁証」とは、病巣が体の表面に近い部分にあるのか、体の内部にあるのかを区別するものです。前者なら「表証」、後者は「裏証」と呼びます。
 表証は主に外部からの六淫によって引き起こされる病気で、発熱や悪寒、軽く触れただけではっきりと確認できる脈(浮脈)などの症状を伴います。これに対して、裏証は内傷からの病気で発熱などを伴いません。
 ただ、表証の期間は短く、体外から襲ってきた六淫であっても、体表から体内に侵入した時点で裏証に変化してしまいます。

◆寒熱弁証と虚実の組合せ
 気・血・津液を陰陽で分ければ「気が陽、血・津液が陰」となりますが、この理由の一つは、気には体を温める作用(温煦作用)があり、血・津液には体を冷やす作用があるからです。
 気の中でとくに温煦作用の強い「陽気」と、血・津液の中でとくに冷却作用の強い「陰液」のバランスがうまく保たれることで、私たちの体は36度前後の平熱を維持しているのです。バランスが崩れてどちらかに偏れば、熱が出たり逆に冷えてしまったりするわけで、この陽気と陰液のバランスの崩れから病気の性質を見るのが「寒熱弁証」です。
 寒証か熱証かの区別は比較的わかりやすく、足腰が冷えて痛いとか寝冷えでの腹痛など冷えを伴う症状が寒証、発熱やほてりなどの症状を伴うのが熱証です。ただ、同じ寒証であっても、六淫のうちの寒邪、湿邪といった寒性の病邪が強烈なために症状が出ているのか、陽気が弱いために症状が出ているのかによって証を分ける必要があります。
 この寒熱に「虚か実か」という弁証を加えてみましょう。寒性の邪気が強くて起こった病気なら実証の寒証だから実寒証」、陽気の不足からの発症なら虚証の寒証だから「虚寒証」といいます。
 熱証の場合も同様で、熱性の邪気(火邪や暑邪)が強くて起こる熱証は「実熱証」、陰液の不足で発症したのなら「虚熱証」と判断するのです。もちろん、実寒証と虚寒証、実熱証と虚熱証では治療方法が違ってきます。
 なお、寒熱ではなく具体的な成分の点から、陽気の不足した症状を「陽虚証」、陰液の不足した症状を「陰虚証」と呼ぶこともあります。意味は虚寒証、虚熱証と同じです。

◆複数の証が重複する場合も
 八綱弁証その他弁証法を実際に使って患者の証を決定するという作業には、かなりの知識と経験が求められます。また、一つの症状をいろいろな角度から見るという特徴から、実証であると同時に熱証であり、さらに表証でもあるというように証が重複することがあります。そのため、東洋医学を専門的に勉強した人でなければ理解しづらいかもしれません。
 しかし、少なくとも現代医学とは異なる観点で病気をとらえていることはわかるでしょう。現代医学での診断をそのまま東洋医学に応用することはできないという理由は、まさにこの点にあるのです。




日本実業出版社 (著:関口善太)
「東洋医学のしくみ」
JLogosID : 5030061


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出版社:日本実業出版社[link]
編集:関口善太
価格:1,620
収録数:115
サイズ:20.8x14.8x1.6cm(A5判)
発売日:2003年7月
ISBN:978-4534036179

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