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東洋医学のしくみ6章 東洋医学の現状と将来 >

東洋医学の制度
【とうよういがくのせいど】

制度の未整備が招くトラブル

◆鍼灸の資格だけでは処方できない
 日本での東洋医学は「代替医療」(伝統療法、民間療法など現代医学以外の療法の総称)の一つという位置づけなので、資格制度的にも未整備なところが多くあります。これは、東洋医学を学ぶ場合だけでなく、東洋医学を利用したいというときにもいろいろな不都合を生んでいます。
 もっとも深刻な不都合は、「医師であれば知識が十分でなくても東洋医学の方法が使える」ということから発生する誤診や副作用ですが、これについてはすでに何度か触れたので繰り返す必要はないでしょう。ここでは、漢方薬局とか鍼灸院へ行くといった東洋医学の利用における不都合について考えてみます。
 治療効果の伝達経路で見ると、漢方薬は臓器から病気にアプローチするもので、鍼灸は経絡からアプローチします。ですから、両方を併用したり経過によって使い分けたりすれば、より大きな効果が期待できます。
 しかし、患者が実際にそういう治療を受けたいと希望しても、実現は至難です。鍼灸の治療ができる漢方薬専門家は非常に少ないし、一般の鍼灸院では、漢方薬を処方することも販売することもできないからです。
 漢方薬局を開業する薬剤師は、資格取得段階では漢方薬の知識さえ不要なのですから、さらなる鍼灸の知識がないのはまだ理解できます。しかし、専門の学校で東洋医学を学んでいるはずの鍼灸師に漢方薬の知識がないのはなぜでしょうか。
 最大の理由は、資格試験にその科目がないからですが、鍼灸院での漢方薬の販売などが法律で許可されないかぎり、この問題は解決しないでしょういくら漢方薬を勉強しても、仕事として満足に生かせないのです。これが中国なら、もちろん鍼灸師が漢方薬を処方できます。アメリカでさえも同様です。
 結局、日本の現行制度のもとで漢方薬と鍼灸を併用するには、薬剤師と鍼灸師の両方の資格を取得するしかないのです。

◆誰でもなれる気功師とトラブル
 気功の場合は、そもそも日本に気功師という資格がなく、そのことがトラブルのもとになる可能性があります。資格制度は規制の一種ですから、それがないのは悪くいえば「野放し」を意味します。少し訓練して気が出れば(あるいは出なくても)、誰でも気功師を名乗れるのです。
 もし、そういう人が適当な治療行為を行って、患者を骨折させるなどの重大なミスを犯したときはどうなるのでしょうか。
 鍼灸師のように免許制度がある場合は、万一治療に過誤があってもその免許資格の団体が保険に入っているので、患者への補償は保険でカバーされます。しかし、それがない気功のケースだと、被害者は裁判で勝ったとしても賠償金を得られるかは疑問です。相手が日本人でない場合だと、事情はさらに複雑になります。
 今はまだ大きな問題は起こっていませんが、過去に何例か医師法違反で摘発されたケースがあります。資格制度の整備が何よりの急務です。




日本実業出版社 (著:関口善太)
「東洋医学のしくみ」
JLogosID : 5030104


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 日本実業出版社「東洋医学のしくみ」

出版社:日本実業出版社[link]
編集:関口善太
価格:1,620
収録数:115
サイズ:20.8x14.8x1.6cm(A5判)
発売日:2003年7月
ISBN:978-4534036179

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