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60歳からの人生を愉しむ心理学第6章 老いたときに後悔しない生 >

孤立しても不幸ではない人もいる

グブリアムは、配偶者の死がもたらす影響についての研究で「寂別」と「孤立」を区別しています。
別居中の高齢者や、離婚した高齢者、配偶者と死別した高齢者より、未婚の高齢者のほうが孤独感が少ない。つまり、共に歩むパートナーがもともといない人は、ひとりでもそれほど孤独感を感じないということのようです。
また、離婚した高齢者、配偶者と死別した高齢者は、未婚の高齢者や配偶者がいる高齢者より、「今のほうが四五歳のときより悪い状態だ」と評価しています。
パートナーと共に人生を歩んだ経験のある人は、パートナーがいなくなると、「いた頃のほうがよかった」と思うのです。
このことから、高齢者が感じる孤独感とは、以前と比べて社会参加の程度が低下したり、社会的に孤立したりすることで生じるのだと考えられます。以前は周囲に人がたくさんいたのに、孤独になってしまった人ほど「寂別」を感じる。孤独感とは、社会的な関係、人間関係の変化を比較する中で生じてくると言えます。
最近、高齢者の「孤立死」がニュースになり、社会的に注目されています。女性より男性のほうが孤立する傾向にあり、特に結婚経験のない男性は地域とのつながりも薄いそうです。確かに独身者というのは、なかなか地域とのつながりは持ちにくいものです。
けれども前出の研究によれば、未婚者はひとりでもそれほど寂しさを感じていない。いや、もともとひとりでもあまり寂しさを感じないタイプで、ひとりで過ごすのが好きだから結婚しないのかもしれませんが。
「孤立死を防ぐために地域とのつながりを」などと言っても、本人が人づき合いを求めていなければ余計なお世話となってしまいます。
最初からずっとひとりだから、高齢になって孤立していても寂しさを感じない人。人間関係があったからこそ、孤立したときに寂しさを感じる人。果たしてどちらが幸せなのか、考えても結論は出ません。自分の感じる幸せの状態を他人に押しつけても無意味なことなのでしょう。




渋谷昌三(目白大学教授)
日本実業出版社 (著:渋谷昌三(目白大学教授))
「60歳からの人生を愉しむ心理学」
JLogosID : 8615441


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