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60歳からの人生を愉しむ心理学第1章 老朽化しない上手な年のと >

過去の栄光が忘れられない「老女優症候群」

「老女優症候群」という言葉があります。美しい女優が、老いてその美しさを保てなくなり、しのびよる老いにおびえ、老いを否定し、抑うつ症状を起こしたり、アルコール依存症になったりすることから、老いに対する不適応症状を指してこう呼んでいます。女性が美しさや若さを保とうとする努力には、よい効果もあります。「もう老人なんだから」とあきらめてしょぼくれてしまうより、エステやおしゃれに励むことは、お肌以上に心にハリをもたらします。
けれども、若い頃と同じ美貌にこだわり続けるのはおすすめできません。その美しさは確実に失われていくのですから、こだわればこだわるほどストレスになります。せっかくの老いの楽しい時間を余計なストレスで失うより、若いときとは違う新たな美しさや魅力を目指していくことのほうが有意義でしょう。
バーチェイドらが、中年の女性に対して、現在の生活についての満足度を尋ねました。また、その女性が大学生のときに撮影した写真を借りて、その人の身体的な魅力を合わせて評価しました。
すると、「大学時代はたいへん魅力的だった」と評価された人ほど、中年になってからの幸福感が低く、生活や対人関係への適応が悪かったのです。
つまり、若い頃に美人だった女性は「過去の栄光」をひきずって、なかなか頭の切り替えができない。道を歩けば男性の視線を集めた幸福感は、中年になればもう得られません。かつて美貌によって得た自信は失われます。
若い頃からもっと他の魅力を磨かなければならないのですが、失ってみないとなかなか気づかない。いや、本当は十分、魅力的な中年になっているのに、いつまでも自分の新たな魅力に気づかないだけなのかもしれません。
その点、最初から美しさにこだわっていない女性は、じょじょに美貌以外の魅力を発揮し始めます。バーチェイドらは「平凡な女性は、人生の秋を迎える段階になって、あらためて正当な高い評価を得る」と解釈しています。
女性に限らず、男性も含めて、人間、どこに価値を置くかによって心の持ち方も他人からの見え方も変わってくる。人生の前半がふるわなかった人も、後半戦で逆転のチャンスがあるのです。




渋谷昌三(目白大学教授)
日本実業出版社 (著:渋谷昌三(目白大学教授))
「60歳からの人生を愉しむ心理学」
JLogosID : 8615375


【辞典内Top3】 人生の前半戦に強い人、後半戦に強い人  「新奇性」があると、年をとっても軽やかな人になる  フラストレーション耐性の高い人ほど老後を愉しめる  
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