【60歳からの人生を愉しむ心理学】第4章 一生を共にする「周り」を >
家庭内紛争を収めてテリトリーを固める

職場のデスクの境界での紛争は絶えることがありませんが、家庭内での領土拡大をめぐる覇権争いもまた絶えません。
夫が好きでたまらないフィギュアのコレクション。最初は「夫の趣味だから」と我慢していても、どんどん増殖して夫の部屋からあふれ、リビングにまで置かれるようになると妻はイライラして目障りになってきます。
自分のテリトリーと思っている場所に、自分がまったく価値を認められない異物が増殖していくのは不快です。安心できる居場所でなくなってしまう。たまりかねた妻が夫のいない間に夫の書斎(フィギュア部屋)を侵略し、ゴミとして出してしまう。紛争勃発です。
だいたいコレクションというものは、興味のない人にとっては何の価値もないものです。なぜこんなにおもちゃを集めなければならないのか。なぜうちにはこんなにたくさんお菓子の箱と食玩があるのか。無用と思うから捨ててしまう。
しかし、コレクションをする者にとっては、それは有用で大事なものであり、勝手に捨てられるのはまったくの越権行為、テリトリーの侵害です。
妻から見ると「男というのはくだらないものを集めたがる」と思うでしょう。
しかし、夫から見ると「女というのは実にくだらないものを集める」と思っています。足は2本しかないのに、あんなにたくさん靴を買ってどうしようというのか。どれだけジュエリーとやらを集めれば気がすむのか。
お互い様ということも多いはずです。そこで、国際間にルールが必要なように、夫婦間にもルールが必要になってきます。
「コレクションは書斎に納めること。それ以外の場所に置かれたものは妻に捨てる権利がある」などと定めて、お互いのテリトリーを尊重し合いましょう。
家庭を、家族の構成員みなが安らげるテリトリーとするための運営は、それほど簡単なものではありません。しかしなんと言っても、家庭は一番大事なテリトリーのはずです。「職場だけが安らげるテリトリー」というのでは、定年以降、あなたのテリトリーはどこにもなくなってしまいます。
渋谷昌三(目白大学教授)
![]() | 日本実業出版社 (著:渋谷昌三(目白大学教授)) 「60歳からの人生を愉しむ心理学」 JLogosID : 8615417 |