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60歳からの人生を愉しむ心理学第4章 一生を共にする「周り」を >

安定した「テリトリー」を持つ幸福

さて、ここでちょっと話は変わりますが、人は心理的な「テリトリー」を持っています。たとえば、満員電車ではギュウギュウと体を押しつけ合うことを我慢していますが、そこそこ空いている車内で隣にピタリとくっつかれると、不快な気分になりませんか? 思わず「車間距離」ならぬ「人間距離」をとろうと、少し離れるでしょう。
また、会社で席を並べている同僚のデスクが乱雑で、積み上げた資料がいつもこちらのデスクへはみ出してくる。はみ出すたびに何気なく向こうへ押し戻すのに、またどんどんこちらへのさばってくる。これも不快です。
いずれも「自分のテリトリー(縄張り)を侵害された」と感じ、心理的に不快感をもよおすものです。
会社のデスクくらいで「縄張り」などと強がるのはいかがなものか、とは言えません。テリトリーと感じられる場所を持つのは案外、大切なことなのです。
テリトリーとは、その中では自分が主体的にふるまえる場所。一歩外へ出れば他人とぶつかり、他人に気兼ねして行動しなければなりませんが、テリトリーとは自分が自由にできる、安心できる場所なのです。
職場では大きな権限を持つ人のほうが心理的なテリトリーが広いと言えるでしょう。しがない平社員は安らげるテリトリーが狭い。せめて自分のデスクくらい好きにカスタマイズしたいのに、隣のやつにはみ出されてはかないません。
それでも家に帰ってくれば「ここが俺のテリトリーだ」と存分に安らげるならいいのですが、家に帰っても「身の置き所がない」のでは、かなりストレスフルな生活となります。高架下の赤ちょうちんだけがテリトリーでは心もとない。
そんなことにならないよう、「家庭」「夫婦」という一番の自分のテリトリーを固め、安定させていくことは、心の安定につながります。
自分の好きなものを置くのもテリトリー作りのコツです。たとえばキッチンは妻のテリトリーでも、好きな焼酎が並んだ居間の一角は夫のテリトリー。その一角にはホッと安らぎを感じることができます。犬が電柱におしっこをかけてマーキングするのと同じように、自分のにおいをつけておくわけです。




渋谷昌三(目白大学教授)
日本実業出版社 (著:渋谷昌三(目白大学教授))
「60歳からの人生を愉しむ心理学」
JLogosID : 8615416


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