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60歳からの人生を愉しむ心理学第4章 一生を共にする「周り」を >

売られていないケンカは勝手に買わない

前出の社会言語学者デボラ・タネンは、会話の持つ意味が男女で違うと述べています。女性は「会話とは共通の問題を協力して解決する手段」と考え、男性は「会話は闘争のための一形態」と、とらえているというのです。
女性と男性ではっきりと分かれるものではないと思いますが、確かにそういう傾向はあるかもしれません。
「〇〇さん、あの件、もう課長に伝えていただけましたか?」と聞かれたとき、「危ない、忘れていたよ。思い出させてくれてありがとう」と答えれば円満なのに、なぜかケンカを売られたように感じてしまい、「忙しいから、あとにしてよ」と不機嫌な答え。
「でも、そろそろ話を進めないと、営業部とのやりとりもありますし」「営業部には貸しがあるんだ。待たせとけ!」
女性にしてみれば、気をきかせてフォローをしたつもりが、男性は「責められている」「仕事ができないとバカにされている」と感じてしまい、すれ違い。解決する方向には向かわず、闘争の方向に向かってしまうのです。
夫婦の会話も同じ。妻は「共に解決しよう、よりよい関係を築こう」と考えて相談を持ちかけているのに、夫は「また文句が始まった」と受け取り、素直に聞く耳を持ちません。「しかたないだろ。そういうおまえはなんだ!」と自己正当化、相手の批判を始めてしまい、建設的な結論も出ないまま物別れに終わります。
まず、「会話とは、勝ち負けを決めるためのものではない」と肝に銘じましょう。
どっちが偉くて、どっちがダメなのかは、とりあえず置いておく。
よくよく聞いてみれば、「あの件を課長に伝えてくれたかどうか」を確認しているだけだし、次の休日は出かけたいから留守を頼みたいという相談です。心の中で余計な批判を加えて勝手に不機嫌になる必要はありません。売られてもいないケンカを自ら進んで買っているようなものです。
会話とは、お互いに理解し合い、協力し合うためにも使える便利なコミュニケーション・ツールです。これを有効活用しなくては、仕事も家庭もうまくいきません。上手な会話こそ、幸福に導いてくれるのです。




渋谷昌三(目白大学教授)
日本実業出版社 (著:渋谷昌三(目白大学教授))
「60歳からの人生を愉しむ心理学」
JLogosID : 8615419


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