【60歳からの人生を愉しむ心理学】第4章 一生を共にする「周り」を >
子どもが自立する直前は夫婦にとって危うい時期

結婚して、子どもが産まれて、その子どもが自立して、また夫婦二人の関係になる。これが家族の形の典型的な変化です。
調査によると、夫婦関係は結婚したときに一番「愛情得点」が高く、子どもができると低くなっていくそうです。なぜなら、妻の愛情が夫より子どものほうに向くからです。子どもに関心がいってしまうので、夫婦間の愛情が低下するというのです。これは日本もアメリカも共通のようです。
つまり「子はかすがい」ではなく、子は夫婦関係を壊しているとも言えます。
子どもが自立したときに妻に訪れるのが「空の巣症候群」です。子どもが巣立つと、巣が空っぽになってしまう。それまで母親は子どもの面倒ばかりみていて、夫との関係が深まっていないので、子どもが自立すると生きがいをなくし、無気力症状やうつ状態になってしまうのです。
夫婦にとって、子どもが自立する直前は、一番危うい時期なのかもしれません。
ここで熟年離婚になるか、もう一度夫婦の関係を作り直すかの分かれ道。心理学では「関係性」という言葉を使いますが、二人の関係性をもう一度高めていく必要があります。
結婚して数年が経ち、夫婦の関係性がうまくいかなくなったときに「結婚当初のような関係に戻りたい」と言う人がよくいますが、それはありえないことです。
関係性というのは、よくなったり悪くなったり、常に変動しています。このことを念頭に置いておかなくてはなりません。特に悪くなったときに「回復させる」ということを常に考えていないと、もうズルズルと悪化していきます。
ところが、男性は一度いい関係ができると、それが「持続する」と考える傾向にあります。だから手を抜く。いわゆる「釣った魚に餌をやらない」という態度です。ですから、関係性が悪くなったときにも認めがたく、「妻は変わった」「前のような二人に戻りたい」と願う。
妻さえ前のようにかわいらしい女性に戻ってくれれば、二人の関係も元通りになると思っていませんか? まず、その考え違いをあらためることから、人生後半の夫婦関係がスタートします。
渋谷昌三(目白大学教授)
![]() | 日本実業出版社 (著:渋谷昌三(目白大学教授)) 「60歳からの人生を愉しむ心理学」 JLogosID : 8615410 |