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60歳からの人生を愉しむ心理学第1章 老朽化しない上手な年のと >

「老い」はある日突然やってくるわけではない

「老い」は突然やってくるわけではありません。自分でも気づかぬうちに、じょじょに、じょじょに体は使い古されていきます。
たとえば、三十代、四十代になって、子どもの運動会などで衰えを感じる人も少なくないでしょう。まだ若いつもりで走ったら、ひざを痛めてしまったり、ひどい筋肉痛に襲われたりして、「もう若くはないんだな」と思い知らされます。
これが五十代になると、さらに体は自分のイメージとは違う方向に進んでいきます。自分では四〇センチほど足を踏み出したつもりが、三五センチしか出ていない。この五センチの微妙なズレが「何もないところでつまずく」という不可思議な現象を引き起こします。
いつのまにか体が硬くなり、関節の可動域が少なくなっているために、歩幅が狭くなっている。けれども脳内イメージが切り替わっていないのです。
ところ狭しと物が並んでいる場所で、右に左にやたらとぶつかるようになったり、ちょっとした物を持ち上げようとして落としたり。注意力が落ちてきたうえ、視覚から入ってきた情報を脳が判断して動作を起こすまでの速度に微妙な遅れが出ているのでしょう。
また、リカバリーする力も落ちてきます。つまずいてグラッとバランスをくずしたとき、若い頃なら腹筋や背筋の力ですぐにバランスを戻せたものが、グラグラグラグラ、「おぉーーーっと危ない!」となるのが五十代以降。そのまま駅の階段を転げ落ちるほどではありませんが、その危険を感じ始める年頃です。
十代、二十代の頃には「筋力維持」など考えたこともなかったものです。筋肉が維持しなければならないものとは思いもよりませんでしたが、これからは、日々、「維持」を心がけていないと、どんどん筋力が落ちていきます。
そして、関節は冗談のように硬くなっていく。大事な取引先へのお辞儀の角度が浅くなってきたのも、お腹の脂肪と腰の痛みと関節の硬さゆえでしょう。
「重力って、やっぱりあるんだな ......」
と、その存在を感じ始めるのも年の功。しかし、これは誰もが避けることはできません。いかにうまくつき合っていくかに尽きるのです。




渋谷昌三(目白大学教授)
日本実業出版社 (著:渋谷昌三(目白大学教授))
「60歳からの人生を愉しむ心理学」
JLogosID : 8615370


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