命を支える魚介類の栄養価値
「魚一、豆一、野菜が四、主食は胚芽米」。これは私が戦前に学んだ女子栄養学園のモットーでした。日本の国民病であった結核と脚気の原因は穀類にかたより、良質たんぱく質やビタミン、ミネラルの不足によるものとして食生活改善の目標でした。たんぱく質源として魚や大豆・大豆製品を100g以上食べるようにという教えです。戦後は肉、卵、牛乳、果物などの摂取量がふえて結核や脚気は珍しい病気とされますが、最近では牛や豚などの動物性脂肪の摂取量がふえて、生活習慣病の増加や若年化が問題となっています。ここで魚中心の日本人の食生活が見直されてきました。
魚は良質たんぱく源であるうえ、脂肪にはIPAやDHAなど多価不飽和脂肪酸を多く含みます。どちらも血液中のコレステロールや中性脂肪を低下させ、動脈硬化を防ぎ血栓ができにくくなるため、心筋梗塞や脳血管の病いを防ぐ効用もあります。さらにDHAは脳細胞を活性化させ、痴呆を予防する働きもあります。特にカツオやマグロ、ブリ、サンマ、サバなどの青背の魚にはDHAが多く、赤身の部分に含まれるタウリンには血圧の上昇を抑えて高血圧を予防する効用があります。
人間は海から生まれてきたといわれますが、魚に限らず海藻などを栄養分として育つウニやカキ、アサリ、アワビなど魚介類は私たちの体に必要な微量栄養素をたくさん含み、私たちの命のもとになっています。
| 東京書籍 (著:岸 朝子/選) 「東京五つ星の魚料理」 JLogosID : 14071087 |