【東京五つ星の肉料理】豚肉料理 > 台東区
蓬らい屋
【ほうらいや】

文化人に愛された下町の店

大正3年(1914)ごろに屋台から始め、現地ではお隣の甘味処「福助」と同じく昭和3年(1928)に開業した。昭和25年から27年ごろに建てられた小意気な建物が2軒並ぶ様子は、いかにも下町っぽくてなかなか絵になる。
創業当初にヒレカツが好評だったから、以来肉はヒレしか使わない。生の脂から毎日自家で作るラードとへットを半々に混ぜた揚げ油は、210~220度の高温と180度くらいの低温を使い分ける。肉汁が逃げないよう周りをガードするため、
まず高温の油で1分から1分半ほど揚げてから、低温の油に移してじわじわ揚げる。さすがにこの太さだから、蒸らす時間も含めて都合13分ほどと、かなり時間がかかる。
揚げ色濃いめの衣は薄くかりかりと香ばしく、肉は熱いつゆにあふれて、甘さがほんのり鼻に抜ける。「普通のことを普通のままに」作る下町のヒレカツは小津安二郎や安藤鶴夫などの文化人に愛され、近くは小泉純一郎元首相も賞味したという。
![]() | 東京書籍 (著:岸 朝子/選) 「東京五つ星の肉料理」 JLogosID : 14070855 |