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東京五つ星の鰻と天麩羅コラム > 鰻の愉しみ

入れ込みの座敷がいい うなぎ割烹 尾花

都心を離れて南千住まで行くこともあり、この店を訪れるときはたいていが遠足気分だ。開店を待って、いつも門の前に何人かの客がたたずんでいる。予約は取らない。門が開いて大きな玄関から店に入ると、すべての客は到着順に、畳敷きの六、七十人は入ろうかという入れ込み大広間に通される。塗りのちゃぶ台はみるみる満席。座って、小1時間ほどは待つ。なぜなら、座った客の注文を受けてからうなぎを割くためである。私たちの注文は白焼、名高い大串、うな重に蒲焼、それに待つ間を繋ぐお新香、と単純だ(この日は残念ながら大串はなく、勧められた中串にする)。

お新香が本当においしい。紫紺とはこの茄子の漬物のための言葉か、と思わせるほどのあざやかな色。そして大根、きゅうりなど、歯ごたえと季節の香りを小鉢一つに盛りつけているのは、まことにみごとだ。

やがて白焼が運ばれてくる。山椒醤油で食べる白焼きは、さわやかな脂が舌に残る。次に中串、つづいてうな重と蒲焼を、肝吸いと一緒にいただく。中串とはいえ青磁の大皿に堂々と、飴色も艶やかなたれの香味も芳しく、身を舌にのせれば、ふんわりととけてゆく。味は濃厚だ。うな重、蒲焼に比べ、中串はたれが違うのかと思えるほどの味だったが、店の人は「同じたれを使っています」という。なるほど、これはうなぎの大きさにより、脂の味が違うのだと思い当たった。大満足。畳の座敷ということもあり、食後はのんびりと寛いだ。




東京書籍 (著:見田盛夫/選)
「東京五つ星の鰻と天麩羅」
JLogosID : 14070805

【お隣キーワード】天ぷらこそが江戸前  下町の味、どぜう  春の一日、秋本での遅い昼餉  うなぎについて思い出すこと  
【辞典内Top3】 つきじ天竹  伊せ喜(閉店)  かぐら坂 志満金  

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東京五つ星の鰻と天麩羅
鰻の石ばし,色川,宮川,野田岩,安斎,天麩羅のみかわ,山の上,近藤など,都内と近県の102の老舗・名店を料理批評家・見田盛夫が厳選。

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 東京書籍「東京五つ星の鰻と天麩羅」

出版社:東京書籍[link]
編集:見田盛夫/選
価格:1,728
収録数:102軒
サイズ:19.8 x 12.2 x 1.8cm()
発売日:2007-07-01
ISBN:978-4-487-80161-9

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