明神下 神田川支店
【みょうじんした かんだがわしてん】
うなぎとすっぽんの二枚看板
名店の誉れ高い明神下神田川本店(12頁参照)が暖簾分けした店は、東京と京都にわずか1軒ずつ。「神田川支店」を名乗るのは、抜群の業師にのみ許された、いわば免許皆伝の証だ。その東京の一軒が大正7年(1918)創業のこの店。初代の息子2人が2代目を継ぎ、現在は2代目の子どもたち、初代の孫に当たる2人が3代目を受け継いでいる。こうして創業以来の、いかにも一族経営らしい家族的な雰囲気は今も変わらない。
創業のころは旧国技館の御用達的な店として知られ、その後も名横綱千代の山、栃錦らと親交を重ねるなど角界との繋がりが深かった。国技館が再び両国に戻ってきた現在は、相撲見物帰りのなじみ客が足繁く訪れる。関東大震災や先の戦災を潜り抜けてきた相伝のたれ、蒸す前の白焼きに丹精を込めるなどたゆまぬ職人の技が、長く顧客の心をつかんできた。
うなぎと並んですっぽん料理が人気だ。この二枚看板とも、初代の力量を今もしっかり伝えているのはさすがといえよう。
| 東京書籍 (著:見田盛夫/選) 「東京五つ星の鰻と天麩羅」 JLogosID : 14070731 |