【東京五つ星の鰻と天麩羅】鰻の名店厳選40軒 > 葛飾区
川千家
【かわちや】

ご神水がうなぎを清める

映画『男はつらいよ』の舞台・柴又帝釈天(題経寺)の参道に建つ川魚料理専門店。矢切の渡し近くの江戸川河原に、安永年間(1772~81)に茶店を開いたのが始まりといい、店の歴史は古い。現在地に移ったのは柴又に人車鉄道が開通し、帝釈天への人の流れが変わった明治33年(1900)、5代目のころ。以後も代を重ね、現在の当主は10代目を数える。そんな老舗ながら柴又という土地柄からか、店はごく庶民的だ。
名物のうなぎと鯉は生簀に泳がせて、どちらも注文を受けてから調理する。生簀には、敷地内の地下40mから汲み上げる井戸水を満たす。「この帝釈天のご神水が、川魚特有の泥臭さや生臭さを消してくれるんです」と当主の天宮久嘉さん。季節ごとに一番の産地からうなぎを仕入れ、米は新潟県上越市の浦川原で作るコシヒカリ。浦川原の米を使うのは、戦時中に柴又の人々がこの地に疎開した縁からという。さすが寅さんのふるさと、時は移っても人情の濃さは変わらない。
![]() | 東京書籍 (著:見田盛夫/選) 「東京五つ星の鰻と天麩羅」 JLogosID : 14070732 |