【東京五つ星の鰻と天麩羅】鰻の名店厳選40軒 > 葛飾区
川甚
【かわじん】

川を生簀代わりにしていた店

寛政年間(1789~1801)の創業から明治ごろまでは江戸川の川べりにあって、建物の下を流れる江戸川を生簀代わりに利用し、舟で訪れた客はそのまま座敷へ上がれるなど、まことに風流な造りの店だった。のち江戸川の改修に伴って、大正7年(1918)に現在地の江戸川土手沿いに移転し、昭和39年、建物も4階建てのビルに建て替えられた。とはいえ今でも川に向いた部屋からは、豊かな江戸川の流れや矢切の渡しを行く小舟など、のどかな景色を広々と望める。
生簀に泳ぐ活きうなぎを調理するため、仕上がるまで20分ほど待たされるが、浜名湖産のうなぎの身はとろけるようで、皮までやわらかい。水のうちから鯉と味噌を入れて煮る鯉こく、蜂蜜を用いた照りがみごとな甘煮など、鯉料理も人気だ。
尾崎士郎の『人生劇場』や夏目漱石の『彼岸過迄』などに登場し、松本清張や三島由紀夫ら多くの文人に愛されてきたこの店は、柴又の名店として今も暖簾を守りつづけている。
![]() | 東京書籍 (著:見田盛夫/選) 「東京五つ星の鰻と天麩羅」 JLogosID : 14070734 |