【旬のうまい魚を知る本】 >
▼肝なくしてドンコ料理は語れない
![](../dev/images/h-r-.png)
「高倉荘」の自慢料理はドンコのすまし汁。これには大きな肝がドーンとはいっていた。汁を一口すすって、ほかのすまし汁では絶対に味わえない強烈な旨味に惚れ惚れした。ぼくの大好物という点を差し引いても、天下一品のうまさである。ドンコにありがちな臭みがまったくない。肝の濃厚さはどうだろう。清楚淡泊な味の白身との取り合わせが楽しい。
続いてドンコのたたき。これも肝が主役である。肝と身と味噌を包丁でたたいただけの漁師料理。肝ならではのはつらつとした生気が、心のすきまの奥底まで潤すかのようだった。「肝がなくてはドンコ料理とはいわないよ」と各ドンコ産地で耳にタコができるほど聞いてきた。歌津町でそのとおりであることを再認識したのだった。
![]() | 東京書籍 (著:東京書籍) 「旬のうまい魚を知る本」 JLogosID : 14070593 |