【旬のうまい魚を知る本】 >
▼活ブドウイカをハサミで切ってほおばる

民宿「なかむら」の夕食を前にすわると、ブドウイカの活き造りが姿のまま大皿にのっていた。耳と頭と脚の部分をそのままの形で生かし、胴を造りにしてある。皮付きのままの耳や頭の色素が、めまぐるしいほど変わる。こんなに新鮮な証拠はほかにない。胴の部分の上品な甘味をさんざん楽しんだあと、いよいよ耳と足と頭に目が向く。ちょっと残酷ではあるが、添えてある料理バサミで一口大に切って、溶いた肝(これがまたうまい)をからめて口に放り込んだ。「マイカのうまさはアオリイカ以上」という若狭漁師のあの言葉に十分納得する夜となった。
![]() | 東京書籍 (著:東京書籍) 「旬のうまい魚を知る本」 JLogosID : 14070445 |