【旬のうまい魚を知る本】 >
▼イワシ料理の傑作「すし」

九十九里浜の数あるイワシ料理から、地元の人が単に「すし」と呼ぶ傑作を紹介したい。イワシのほか、サンマやアジやコハダを材料とするが、作り方はほぼ同様である。頭とハラワタと中骨を除き、3時間ほど流しっぱなしの冷水に漬けて血抜きをする。水気を切って腹を開いた形で塩をふり2、3時間。次に塩を洗わずに砂糖を少し加えた酢に漬け込む。1週間後に魚を取りだし、せん切りの根ショウガとユズの皮、青唐辛子を散らして、重石をのせて酢を切る。
酢を切ってから5日目から食べられる。重石の代わりに浅漬け用の漬け物容器を使うと、ぐっと手軽に作れる。九十九里浜にはイワシをご飯に漬け込んだ自然発酵のなれずしが古くから伝わっている。残念ながら今では作る人は少なくなったが、前記の「すし」はその現代版といってよい。
九十九里浜には卯の花漬けという忘れがたい味もある。血抜きまでは前述「すし」と同様に進める。これに塩をふって一晩置き、そのあと酢に2、3時間漬ける。卯の花、つまりオカラの水気をしぼって、空鍋に入れて弱火で炒めながら水分を飛ばして冷ましておく。イワシの腹にオカラを詰めて、容器に入れて上から重石をのせる。翌日が食べ頃だ。
マイワシの旬は冬とする産地もあるが、年間おいしく食べることができる。
![]() | 東京書籍 (著:東京書籍) 「旬のうまい魚を知る本」 JLogosID : 14070301 |