【旬のうまい魚を知る本】 >
▼けっしてかなわぬ「磯のアワビの片思い」

アワビの語源は殻が一枚しかないため、アハヌミ(不合肉)が転じたとされる。どうやら古代の人には、アワビの殻がもう一枚を恋しがっているように思えたようだ。万葉集にも「伊勢の海人の朝な夕なに潜くとふ鮑の介の片思ひにして」とある。片思いの男(女)を指して「磯のアワビの片思い」とちゃかしたりするのもこの類であろう。念のため書いておくが、アワビはサザエと同じ巻貝の一種。ハマグリやアサリのように二枚貝ではなく、もう一枚がなくなったわけではない。
![]() | 東京書籍 (著:東京書籍) 「旬のうまい魚を知る本」 JLogosID : 14070080 |