ワクチン
【わくちん】
インフルエンザのワクチンが不足してしまう原因
インフルエンザの流行で学級閉鎖になるといった事態が起こらないよう、以前は学校で児童・生徒全員にインフルエンザ・ワクチンを接種していた。こんな全幅の信頼が置かれていたインフルエンザ・ワクチンの予防接種も、平成に入ってから様相が変わってきた。インフルエンザにもいろいろなタイプがあり、その年の流行タイプが分からなければ予防接種しても無駄だとか、予防接種による副作用が報告されたりしたことなどを受けて、一九九四(平成六)年に予防接種法が改正され、学校での予防接種の義務がなくなったのだ。このことが、諸外国でインフルエンザが流行したとき、日本国内でワクチンが不足するという事態を招くことになった。それというのも、インフルエンザワクチンの製造過程では、ほかのワクチンをつくるのとは異なった特殊な培養体が必要で、急には増産できないからだ。その特殊な媒体が、鶏の有精卵だ。オス鶏とメス鶏を自然飼育し、交配がおこなわれて産み落とされるのが有精卵である。孵化させれば、当然ヒヨコが生まれる。スーパーで売られている卵は、養鶏場で大量生産される無精卵ばかりで、温めたところでヒヨコにならないのはご承知の通りだ。この有精卵の孵化途中でインフルエンザ・ウイルスを注入し、培養してから取り出した液がワクチンの原料になる。その後は数カ月をかけて様々な処理をし、ようやくインフルエンザ・ワクチンになるが、そもそも有精卵が少ないからどうしようもないのだ。予防接種法の改正によりインフルエンザ・ワクチンの需要が減ったため、製薬会社はワクチン製造ラインを縮小した。それに合わせて有精卵の生産高も減少したのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820978 |