盛塩
【もりじお】
夜中に皇帝を部屋に呼び寄せるため!?
料理店では、ドアの両側に塩を高く盛っていることがある。この塩を「盛塩」または「塩花」と呼ぶ。「清め塩」「盛花」「口塩」と呼ぶこともある。これをすると、お客がたくさんくるという縁起を担いでのことだ。このほか、地鎮祭や神事のときにも塩を盛ることがある。この盛塩の起源は、中国の晋の武帝の故事に基づいているといわれている。武帝には、多くの後宮の女性たちが仕えていたので、彼は絵描きに女性たちの肖像画を描かせて、その夜の相手を決めていた。ところが、数が多すぎて、肖像画を見るだけでも時間がかかる。そんなことに時間をかける暇はないと思った彼は、奇抜な方法を思いついたのである。後宮の女性たちには、それぞれ個室が与えられていた。そこで彼は、女性たちの部屋の周りを羊(一説には牛)に引かせた車に乗って回った。そうして、羊が足を止めた部屋の女性と一夜をともにすることにしたのである。これなら、自分が女性選びに煩わされることもないと考えたのだ。困ったのは女性たちである。後宮の女性たちにとっては、皇帝の寵愛を受けられるか、そのまま見捨てられてしまうかでは処遇が大きく違ってくる。そこで一計を案じた女性がいた。羊の好きな塩水をかけた竹の葉を自分の部屋の前に置いたのである。このような故事から、人を誘うために玄関に盛塩をする習慣が生まれたようだ。日本では、古くから塩は清めの儀式に用いられてきた神聖なものだったので、そうした習慣とも融合して塩を盛るようになったとされている。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820907 |