光源氏
【ひかるげんじ】
光源氏は、どれほどのイケメンだったのか?
『源氏物語』の主人公である光源氏は、そもそも「光り輝くように美しい」から「光の君」と呼ばれることになったのだから、顔かたちが整っていたと見るのは当然のことである。平安文学では、様々な出来事を書き連ねはするが、登場人物の容姿について細かく触れないのが普通だった。しかし紫式部は『源氏物語』のなかで、光源氏はもちろん、ほかの登場人物たちの容姿についても細かく書き込んでいる。それは、長い年月にわたる物語だから、登場人物たちが年をとるにつれて、体と同様に心も変化していったことを表現したかったからではないかといわれている。一〇代、二〇代の頃の光源氏について「ひどく面やせて見えるのが格別に美しい」と書いていて、ほっそりと面長の優男を想像させる。しかし、『空蝉』の帖では背の高さが特筆されていて、決してなよなよした男ではなかったことがわかる。平安当時の日本人の平均身長は男性で一五〇センチほどだったが、紫式部の表現ぶりから、彼は一八〇センチ近くはあっただろうと思わせる。三〇代に入ると、「ただやせて背ばかり目立っていたのが、少し肉がついてきて釣り合いがとれ、見栄えがよくなった」と書かれている。四〇代ではすでに子持ちの彼に「とてもそのようには見えない」と若々しさを強調している。若い頃から光源氏のいちばん近しい友人として登場する頭とうの中将は、源氏を上回る背の高さの人物だが、中年になるとたっぷり脂肪をつけた貫禄十分の様子が描かれる。いくつになっても夢見がちな生活を送る源氏に対して、内裏でそつなく出世していった彼の人生をうかがわせるに十分な表現だ。おそらく中年になった光源氏も、現在のイケメン俳優並みのカッコよさだったに違いない。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820735 |