トルストイ
【とるすとい】
目立つのが大好きなパフォーマンス大作家?
『戦争と平和』、『アンナ・カレーニナ』といった傑作小説で世に知られるロシアの偉大な作家トルストイだが、後に彼は自分の作品を恥辱とさえ考え、すべての財産をなげうってしまう。晩年は愛と平和を讃え、貧困の撲滅に精魂を傾け、自分の思想をパンフレットにして荷車に積んで売り歩く生活もした。そもそもトルストイは、その作品からは想像できないほど虚栄心が強く、利欲と高慢さに満ちた人物だったといわれる。自分でもその性格を認め、自分が作家になったのも、虚栄心と利欲を満足させるためだったと述べている。若い頃からしゃれ者で、着るものには惜し気もなく金をかけ、歩くにも気取って歩く。軍隊に入れば、自分が目立ち、出世に役立つ状況だと判断すれば、銃弾の降り注ぐなかに飛び出し、実に勇敢に戦った。普段は自分勝手に戦列を離れて観光客のように歩き回っていたが、砲火の音を聞くとすぐさま戦場に姿をあらわしたという。芝居がかったことが大好きで、目立つためにはどんな犠牲もいとわず、快適さや楽しみさえ犠牲にしたトルストイは、晩年、そんな自分の性格を突如として嫌悪したのである。しかし、晩年の貧困生活すら、彼にとってはちょっとしたパフォーマンスだったのかもしれない。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820627 |