東京の坂
【とうきょうのさか】
東京に坂が多いのは、富士山の火山灰の賜物
東京は全国的に見ても坂が多い町である。高低差のある町並みと、それを結ぶ坂道が独特の風情をつくりだしている。坂の多いことは地名にもよくあらわれていて、新坂、富士坂、潮見坂、稲荷坂など、坂のつく地名は東京のどこへ行っても見られる。神楽坂のように、坂が名所になっているような町も多い。なぜ、東京にはこんなに坂が多いのだろう。それは、東京と一〇〇キロ以上離れた富士山と密接な関係があるという。東京の山手台地は、富士山の噴火によってもたらされた火山灰が積もり積もってできた「関東ローム層」の一角を成している。地形的にいうと、およそ東京はその山手台地と下町低地に分かれ、その間に入り組んだ坂があるというわけである。降り積もった火山灰でできた層は五?八メートルにも達するという。まさに「塵も積もれば山となる」のだ。東京には、富士坂、富士見坂など富士山との関わりを想像させる坂が、山の手線内だけでも十数カ所もあるという。かつては市内のいたるところから富士山を眺めることができたのだろう。現在も富士山が見える坂に、荒川区西日暮里にある富士見坂がある。しかし、富士山の全体が見えたのは一九九〇年代前半までで、一九九四(平成六)年にはいくつかの高層ビルが視界を遮さえぎり、富士山の左半分は見えなくなってしまった。もちろん気象条件がよいことは絶対条件だ。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820602 |