チンドン屋
【ちんどんや】
演奏する曲の著作権使用料は、依頼主が払っている
日本の伝統芸能という人もいるくらいの「チンドン屋」。派手な衣装にラッパと鉦太鼓を鳴らして街を練り歩く二、三人の楽団という、ごく小規模の広告専門業だ。演奏者のほかに、商店の新装開店や特別セールなどと書いたプラカードやのぼりを持った旗振り役が、音楽に合わせてステップをしながら歩くこともある。現在の東京では、これを生業としている人は数えられるほどにまで少なくなってしまった。ほとんどが高齢者で、技術を引き継ぐ人もいないため、やがて街から姿を消すかもしれない。そんな彼らに近代化という時代の波も襲いかかる。インターネットや携帯サイトを使った広告が発達し、チンドン屋の需要がなくなったというだけではない。彼らの仕事につきものの音楽演奏に、著作権料の支払い義務という問題が起きているのだ。当然のこととはいえ、クリエイティブなものへの権利の取り締まりが厳しくなっていることは確かなようだ。著作権の管理と著作権料の徴収代行を行っている日本音楽著作権協会では、「演奏を聴くための入場料をとらない」「営利目的の演奏ではない」「演奏者に出演料を払わない」という三条件をすべてクリアしなければ、演奏するごとに著作権料を支払わなければならないとしている。チンドン屋は依頼主の商店などからギャラをもらい、客の目を引き、足を止めさせるために演奏する。立派な営利目的の演奏というわけだ。そこで、あらかじめどんな曲を演奏するかを届け出て、その使用料を支払っている。ただし支払いをするのは演奏するチンドン屋ではなく、彼らを雇った依頼主である。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820562 |