くいだおれ人形
【くいだおれにんぎょう】
なにわ名物「くいだおれ人形」には、実は家族がいた!
アメリカにケンタッキーフライドチキンのカーネルおじさんがいるなら、日本にだって「くいだおれ人形」がいる。しかも「くいだおれ人形」は、世界中を探しても大阪・ミナミの道頓堀にたった一人しかいない。この人形は、一九四九(昭和二四)年に、その名も「大阪名物くいだおれ」という店が開店した当初から、店のシンボルとして店頭に置かれている。名前を「くいだおれ太郎」といい、誕生日は開店と同年の六月八日になっている。とはいうものの、実は開店日に店頭デビューしたのは太郎の「親父」だった。当時の人気喜劇俳優・榎本健一に似せた顔で、ハチマキとハッピ姿だった。手に乗せた盆に生ビールのジョッキを置いて、電動でくるくる回転していた。ところが、回転するたびにビールがこぼれてしまうため、わずか一週間で引退し、息子の太郎が引き継いだ。一説では、人形制作を依頼された文楽人形師が、創業者の顔に似せてつくったものだという。また、太郎には弟の「くいだおれ次郎」もおり、顔は瓜二つだが太鼓は叩かずバンザイをしているところから「万歳次郎」とも呼ばれる。次郎は、何かおめでたいことがあったときだけ店頭に出てくるのが仕事だ。太郎が大阪名物として人気者になると、一日郵便局長に借り出されたり、国際親善で外国旅行に出かけることになったりと、店頭から姿を消すこともある。そんなときは、次郎が代役を務めることもあるが、「只今出張中」の看板が出されていることもある。店にとっては、単なるキャラクター人形ではなく、店の看板であり、誇るべき「のれん」ということのようだ。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820244 |