地図①
【ちず】
厳密に見える地図にも誤差がある?
現代では、地球上のほとんどの場所の地図が整備されていて、地図の読み方さえ知っていれば、まったく初めての土地でも簡単に行けるようになった。日本の場合、国土地理院が利用目的に応じて数種類の地図を発行している。なかでも基本となるのは、縮尺二万五〇〇〇分の一の地形図で、四三四一枚の地図で北方領土などを除く日本全国をカバーしている。多くの人に信用され、利用されている地図だが、実は必ずしも正確だとはいえない部分もあるという。もちろん間違っているのではなく、あまりにも厳密に正確さを追求すると、かえってわかりづらくなってしまうことがあるからだ。たとえば、幅一三メートルの道路を、二万五〇〇〇分の一の地図にあらわすと、〇・五二ミリの幅になってしまう。これではどこに道路があるのか見えにくい。そこで、一ミリ幅の二本線を使い、「記号として」道路をあらわしている。地図記号としての道路幅は、実際の道路幅によって決まっていて、幅が一三?二五メートルの道路は地図上では一ミリ、五・五?一三メートルは〇・八ミリ、一・五メートル未満の道路は点線一本であらわされる。また、JRの線路も太さ〇・四ミリの白黒の帯という「記号」として描かれる。地図上の道路が、実際の幅よりも広く表現されると、道路に接している建物などは、その分だけ移動させなくてはいけなくなってしまう。国土地理院の規定では、地図上で〇・五ミリまで、やむを得ない場合は一・二ミリまでの移動が許されている。つまり、地図上の道路の幅や建物の位置を測り、縮尺から計算してみても、それは実際の道路の幅や建物の位置とは異なるということだ。しかし、だからといって地図が不正確だということにはならない。なぜなら、地図上の道路や建物などはすべて記号だからである。記号化することによって、情報を読み取りやすい地図がつくられているといってもよい。だから、あまり重要ではない小道や細い川などが省略されたり、山道のカーブの数なども実際より減らして表現されたりすることもある。建築物も、小さいものを省くことで全体の様子がわかりやすくなるよう工夫されているのだ。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820545 |