地球岬
【ちきゅうみさき】
「地球」とは全然関係がなかった!
北海道室むろ蘭らん市にある「地球岬」は、高さ一〇〇メートル前後の太平洋を見下ろす断崖絶壁が約一三キロも続く。対岸の渡島半島の駒ケ岳や恵山岬を望み、さらに遠く、下北半島をも見ることができる。一九八六(昭和六一)年一二月には展望台が設置され、北海道の代表的景勝地としての地位を確立した。朝日新聞社主催の「北海道の自然一〇〇選」に選ばれたばかりか、人気投票では堂々の第一位となったほどだ。また、渡り鳥のルート上でもあり、アマツバメ、ハクセキレイなどの渡り鳥や、ウミウ、オオセグロカモメ、そしてそれらの上に君臨するハヤブサなど、地球岬では様々な鳥たちの生態を見ることができる。さらに、夏の海ではイルカの群れを見ることもできるようだ。このように壮大な自然を間近に眺められ、鳥やイルカなどの動物の生態までも見られるとあって、「地球岬」といったスケールの大きな名で呼ばれているのも納得である。ところが、「地球岬」という名の由来は、景観の雄大さからきているわけではないのだ。「地球岬」の「チキュウ」の語源は、アイヌ語で断崖をあらわす「チケプ」で、それが「チケウエ」「チキウ」となまったものなのだ。それに地球という漢字を当てはめたものだから、今では「チキュウ」岬となってしまった。もっとも、国土地理院が発行している地形図ではチキウ岬(地球岬)と表記されており、アイヌ語からきた地名であることが想像できる。北海道の地名には、このようにアイヌ語の音を漢字で表記した地名が多い。しかも、漢字本来の意味ではなく、音訓を取り出して置き換えているうえ、無理矢理当てはめた例も多いものだから、本来のアイヌ語の意味は失われ、漢字を読むのも難しいという地名がたくさん生まれてしまった。「地球岬」に立ってはるかな水平線を眺めながら、アイヌの地名や文化に思いを走らせるのも、景観に負けない壮大なものではなかろうか。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820543 |