地下鉄②
【ちかてつ】
地下鉄を通すときに土地代は払われるのか?
地下鉄を建設するとき、地代は払われるのだろうか。結論からいえば、地代は支払われるのだ。民法の「土地ノ所有権ハ法令ノ制限内ニ於テ其上下ニ及フ」(第二〇七条)という条文がその根拠となる。ただし、土地の上下とはいっても無限に所有権が認められるわけではなく、おおむね利益のある範囲に限るとする解釈が一般的である。このことについて法務省に聞いてみた。「土地の所有権は地上だけでなく地下にもおよぶ。たとえばAさんBさんCさんが隣接して住んでいたとき、Aさんが自分の家の庭に穴を掘り、Bさんの家の地下を通してCさんの家に抜け道をつくったとしたら、これは民法に違反する。基本的に地下であっても地上の権利となんら変わりはない」ということで、やはり、地下の土地の権利は地上の土地の持ち主のものだということだ。つまり、地下鉄を建設するときは、地上の土地の所有者から、地下に関する権利を譲り受けなければならないのだ。地下鉄が国道などの公道の下を通るのなら、このような問題は起きないが、道路の下ばかりとはいかない。やはり民有地の下を通らなければならないことも多い。そのための費用は地下鉄事業者の大きな負担となっている。ただし、補償するとはいっても、地上の地価と地下の地価が同額というわけではない。ここで出てくるのが、「立体利用阻害率」という考え方だ。地上と同じように地下を利用できるわけではないから、所有権の対価は何割か減額されるというものだ。地下トンネルの場合、地上の地価の三割から四割程度が地下の使用権として支払われてきたようだ。ただ、地下鉄という公共機関であることは加味されるし、さらに、最近のように、すでに開通している地下鉄や道路と交差させるために、さらに深く掘らなければならないような場合、阻害率は変わってくるし、そもそも所有権がそこまでおよぶのか、という議論も起きているようだ。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820541 |