逮捕状
【たいほじょう】
容疑者には渡さないで、見せるだけ
感謝状、表彰状といえば、相手に贈ることを前提としてつくられている賞状だが、同じ「○○状」でも、逮捕状は容疑者に渡されるのだろうか。東京地方裁判所の事務局総務課によれば、容疑者に渡すことを想定して逮捕状を発行しているわけでもないし、本人が受け取るということはまずないという。そもそも逮捕状とはどのようにして発行されるのだろうか。刑事訴訟法第一九九条によると、検察官や警察職員は、裁判官が発行した逮捕状によって容疑者を逮捕することができるとされている。検察官や警察職員が裁判官に請求し、裁判官が理由があると認めたときに、逮捕状が発行されるのである。日本国憲法第三三条では、「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となってゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない」と規定されている。刑事訴訟法の規定はこの憲法に基づいているのだ。つまり、逮捕状は、国民が無闇に拘束されないための手続きなのである。逮捕状の内容は、刑事訴訟法第二〇〇条に細かく定められているが、用紙のサイズに特別な決まりはなく、一般的にA4サイズが使われているようだ。テレビドラマの刑事物などで、容疑者に提示しているのがこの逮捕状というわけだ。確かに、本人に「はい、これです」と手渡している場面は見たことがない。先頭の刑事が容疑者の目の前に掲げて内容を確認させると、すぐにしまってしまうというのが、お決まりのシーンだ。実は、逮捕状の提示も刑事訴訟法で決められているのだ。では、容疑者に見せただけの逮捕状はどうなるのかというと、逮捕した後は裁判所に提出しなければならない。そして刑罰が確定すると、事件の記録として一定期間検察庁に保管される。保管の期間は刑の重さによって異なっており、最長は死刑の場合で五〇年、最短は勾留の場合で三年である。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820517 |