セミ
【せみ】
セミには、「音頭取り」がいる
真夏の昼間、「ジージー」「ミーンミーン」というセミの大合唱は、暑さをさらに盛り上げる。さて、この複数のセミによる大合唱をよく聞くと、実は偶然鳴くタイミングが重なってしまったという場合と、皆が同調して鳴いている意図的な場合の二パターンがあるという。パターンはセミの種類によって異なるようだ。偶然、合唱になってしまうのはクマゼミやアカエゾゼミだ。クマゼミの場合は、すでに鳴いているオスに別のオスが近づき、まるで張り合うようにして鳴き、しかも相手を押しのけるような仕草まで見せるという。一方、意図的に合唱しているのがハルゼミ、ヒメハルゼミ、ヒグラシなどである。なかでも「ウイーン、ウイーン、……」と鳴くヒメハルゼミの合唱には「音頭取り」がいるらしい。音頭取りの一匹が鳴き出すと、それに合わせて数百匹がいっせいに鳴きはじめて大合唱となる。そして、ある一定時間鳴くと、まるで合唱曲を一曲歌い終えたかのように数百匹すべてが鳴きやみ、合唱を終えるという。大勢で合唱する理由の一つとして、鳥などの天敵に自分たちの位置をわかりにくくすることがあるとも考えられている。セミの鳴き声は種類によって周波数が異なるため、オスゼミのメスゼミへのアピールを含め、鳴き声は仲間同士のコミュニケーション手段にもなっている。ヒメハルゼミの声を分析したところ、三七五〇ヘルツ、五〇〇〇ヘルツ、六〇〇〇ヘルツ、一万三七五〇ヘルツの四カ所にピークがあったという。そのなかでもいちばん高い一万三七五〇ヘルツの音を流したときのみ、それが音頭取りとなって大合唱がはじまるため、この音が仲間とのコミュニケーションに使われている音だとわかったという。セミの鳴き方は同じ音を繰り返すという単純なものだが、音の周波数は時と場合で使いわけているのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820487 |