石鹸
【せっけん】
「ソープ」は、「サポー」の丘の土から誕生した
今日、私たちの生活では当たり前のように使っている石鹸だが、それはどのように誕生したのだろうか。古代ローマ時代、サポー(sapo)と呼ばれる丘では、神に捧げるいけにえの羊の肉を焼いていた。その際、滴り落ちた油脂は燃やした木のアルカリ性灰と混じりあって鹸化し、石鹸成分が生まれたのである。その成分は、土にしみ込んだり、雨で流され、川の岸辺の粘土にしみ込んだ。そして、近くの川で洗濯をしていた女たちは、「サポーの土を使うと汚れがよく落ちる」ことに気がついた。これが石鹸の起源といわれる。そして、この「サポー」から「ソープ(soap)」の名が起こったと伝えられている。紀元前二五〇〇年頃のメソポタミアの都市テロで発見されたシュメール人のタブレット(粘土版)には、皮膚病に硫黄石鹸を使用することや、石鹸製造の方法が記録されているという。そして紀元前六〇〇年頃には、航海民族フェニキア人により、現在の石鹸により近いものがつくられたたようだ。しかし、この頃のものは粗悪なものだったようで、実際に日常的に石鹸が使われるようになったのは、衛生意識が高まり入浴が日常的になった九世紀頃だといわれている。とくに地中海沿岸のフランスの都市マルセイユでは、その頃から石鹸工場があり、ここを中心にイタリアのベニスやサボナ(「シャボン」の語源)などにも広まり、石鹸産業は発展していったようだ。ちなみに、後にフランス王ルイ一四世が、質の悪い石鹸を駆逐するために、マルセイユ以外での石鹸の製造を禁止するが、これが「マルセイユ石鹸」が「王家の石鹸」として世界的に有名になった理由である。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820485 |