スパイ
【すぱい】
イギリスのスパイは、新聞で求人募集をしている
「スパイ求む」。二〇〇六年四月、英国タイムズ紙の別冊にそんな求人広告が掲載された。映画「007」シリーズでも有名な、イギリスの対外情報機関、秘密情報局「MI6」の誇る約一〇〇年の歴史のなかで、スパイを一般公募するのは初の試みだった。「紳士だからこそ、汚い仕事ができる」という伝統的な誇りのもと、これまでは人材を愛国心と国家への忠誠心に厚い「サー(卿)」の称号を持つ家系かそれに準じる家系で、オックスフォード大学かケンブリッジ大学の卒業生のなかからのみ選ぶという、家柄と学歴を重視して選考をおこなってきた。しかし、MI6では、すでに二〇〇〇人以上の職員を抱えているものの、テロ対策や国際的な組織犯罪への対応といった時代のニーズに応えるためには、まだまだ人材不足のようだ。事実、アメリカの同時多発テロ(九・一一テロ)で事前に情報が得られなかったことも、今回の人材募集の理由の一つとして挙げられており、優秀な人材を幅広く一般から求めるのが目的だという。また、中東地域の事情に精通していると見られていたイギリスが、イラク戦争の際、その軍事情報がとれないという実態も明らかになった。そこで、身体的特徴や語学面などから、アラブ社会に潜り込むのに、より適した人材を求めているのではないかといった見方もある。募集したのは事務職、作戦要員、分析要員、語学専門家、技術職などである。応募資格は、過去一〇年の間に五年以上イギリスに在住した二二歳以上のイギリス人。広告では「たやすい仕事ではない。信頼できる人材を求めている。英国民が頼りにしているからだ」とアピールしたほか、ジェームズ・ボンドの世界とはまったく違う世界であることも強調された。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820471 |