新書
【しんしょ】
「岩波新書」がそのはじまり
「新書」というと、「岩波新書」、「中央新書」、「講談社現代新書」などいろいろある。私たちとなじみが深いこの「新書」は、一九三八(昭和一三)年一一月に岩波書店によって創刊された「岩波新書」が最初であった。イギリスのペリカン・ブックス(ペンギン・ブックス社)をモデルにしている。当時、岩波文庫をはじめとする文庫が、すでに古典と呼ばれる名著を収録したのに対し、新書では、斎藤茂吉『万葉秀歌』、三木清『哲学入門』、吉田洋一『零の発見』、吉川幸次郎・三好達治『新唐詩選』など同時代の筆者の書き下ろしを収録した。そして「現代の現代的教養」とのキャッチフレーズとともに、時事、社会、文化、科学など各分野の教養を高めることをコンセプトに発売し好評を博した。新書判の寸法はJIS規格(日本工業規格)外なので一定しないが、一七三ミリ×一〇六ミリが標準である。B6判よりやや小型になる。分量も手頃で廉価な新書は、登場して以来、学生、知識人を中心に安定した読者を獲得していった。さらに、一九五四(昭和二九)年に、中央公論社(現・中央公論新社)がハードカバーとして刊行していた伊藤整の『女性に関する一二章』を新書版にして刊行しベストセラーになった。これを契機に各社が次々に新書を創刊し、いわゆる新書ブームが起こる。なかでも光文社の「カッパ・ブックス」は、時流に応じた企画、廉価、くだけた内容、斬新な書名、宣伝費の大量投入などで、ハウツーもの、娯楽ものを中心に多くのベストセラーを続出させた。戦後出版史の一時代を画したともいえる作品としては、岩田一男『英語に強くなる本』、塩月弥栄子『冠婚葬祭入門』、多湖輝『頭の体操』、星野芳郎『マイ・カー』などが挙げられる。二〇〇七年現在、新書と名づけられているものは三〇以上にものぼる。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820446 |