少子化
【しょうしか】
少子化問題は、古代ローマの時代にもあった
独身の自由を謳歌し、楽しむために結婚から遠ざかる。そして、子どもを産み育てるのを嫌うようになる。まるで現代の日本を見るようだが、実はこの少子化問題は、二〇〇〇年以上前の古代ローマの時代にもあったようだ。当時のローマは子孫の繁栄なくして国の繁栄などありえなかったので、皇帝アウグストゥスは少子化対策として紀元前一八年に「ユリウス正式婚姻法」を実施した。その内容とは、二五歳から六〇歳(女性の場合は二〇歳から五〇歳まで)の男女が結婚していない場合、様々な不利益を被るというものだ。たとえば女性の場合、独身で子どもがいないまま五〇歳を迎えると、遺産の相続権を失ってしまう。しかも、五万セステルティウス(現在の約六〇〇万円)以上の資産を持つことができない。もし仮に、それ以上の資産を持った場合は誰かに譲らなければならなかった。また、二万セステルティウス(同約二四〇万円)以上の資産を持つ独身女性は、年齢に関係なく毎年収入の一パーセントを「独身税」として納めなければならなかった。しかし、三人以上子どもを産んだ場合には、税金が免除され自らの財産を自由にする権利が与えられた。男性の場合には、元老院議員をはじめとした政府の要職に立候補した場合、独身者は既婚者よりも不利な立場になり、既婚者のなかでは子どもが多い者が優先的に当選することになった。また、出世に関しても選挙と同じく、既婚者で子どもが多い者が早く出世することができた。男性のなかには、売春婦と偽装結婚してまでこの法律から逃れようとする者もいた。しかし、それは正式な婚姻とは認められず、独身者と同じ扱いを受けたようだ。たとえ結婚したとしても、六〇歳以上の男性と若い女性、五〇歳以上の女性と若い男性のカップルでは子どもができる可能性が低いため奨励されず、女性には遺産を相続する権利すら与えられなかったという。少子化とはなにもいまにはじまったことではなく、二〇〇〇年以上前から抱えていた問題だったのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820418 |