ジャンヌ・ダルク
【じゃんぬだるく】
死後、本気で信じられた「生存説」の真偽
オルレアンの少女として名高いジャンヌ・ダルクは、軍隊を率いてフランス国王を守りながら、最後は魔女として処刑されている。救国の英雄と一時は賞賛されながらも、英仏間で領土の覇権が争われた百年戦争の政略にもてあそばれた悲劇のヒロインだ。そのジャンヌは、イギリスの手によって一四三一年に火刑に処されたはずだったが、死後五年経ってジャンヌを名乗る女性がオルレアンにあらわれたといわれている。かつて自分の伝令を務めた男性に連絡してきて、彼が本人と確認して公になったものである。これがわかると、国民的英雄が生きていたというので、現地は大騒動になったようだ。果たして彼女は本物だったのだろうか。一四三九年のオルレアン市の公式記録は、ジャンヌの弟も本人に間違いないと証言したと記述されており、当時の人たちが生存を信じたことは事実である。生存を信じる根拠はあった。火刑場へ連れられていくジャンヌは、周囲をイギリス兵に取り囲まれていて、集まった群衆は彼女の姿を本人かどうか確認していなかったのである。イギリスがフランスの領土権を主張するなか、勇敢に戦ってシャルル七世の即位に尽力したほどの女性が、そう簡単に殺されるはずがないという人々の思いが深かったためもある。だから、ジャンヌの地元オルレアンでは、魔女として処刑された人物ではあっても、記念の法要儀式がおこなわれていたほどで、自分はジャンヌだと告白した女性は、クロード・デュ・リスを名乗っていたが、喜んだ市は彼女のために夕食会を開き、金銭を贈ることまでしている。もちろん法要儀式は中止された。オルレアン以外の都市でも、クロードことジャンヌの登場を歓迎し、招待しては金品を贈るということが繰り返されたという。やがて騎士ザルモアーズと結婚して、正式にジャンヌ・デ・ザルモアーズを名乗ったが、彼女が本物だったのかどうか、真実は不明のままだ。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820399 |