尺八
【しゃくはち】
標準の長さは、原則として「一尺八寸」
深編笠をかぶった虚無僧が手にしていて、それを演奏しながら托鉢(僧が鉢を持って門前で読経し、米や金銭の施しを受けること)をする。これが江戸時代頃から一般の人におなじみになった尺八のイメージである。虚無僧というのは、禅宗の一派である普化宗の僧のことで、本山や寺はなく、元武士が在野出家した形で尺八を吹きながら全国を托鉢してまわるというのが修行の形だった。彼らはなぜか幕府から特別の免許状をもらっていて、諸国往来自由という特権もあった。そのためだろうか、時代劇に登場するときは、幕府の隠密だったり逃亡者の変装だったりする。ときには暗殺者という悪役を振られたりするのも、深編笠をかぶっているというイメージに合っていたからだろう。こんな特殊な僧たちに与えられていたもう一つの特権が、尺八を吹くことだった。仏教のほかの宗派では読経や声明が修行だが、普化宗では尺八を吹くことを「吹禅」と呼び、演奏がそのまま修行だった。座禅の代わりというわけだ。だから尺八は、楽器ではなく「法器」とされた。托鉢のために尺八を吹き、法要のためといっては演奏する。それが次第に音楽性を高めていって、一般の人たちが楽器と認識するようになっていく。これが現代に和楽器の笛として残っている尺八のはじまりで、その名は長さが一尺八寸(約五四・五センチ)だったところが由来だ。穴は前面に四つ、背面に一つあって、指の押さえ具合と息の吹き込み方だけで音程を出すというかなり技術のいる楽器である。もちろん、ただの竹の筒に穴を開けただけの縦笛だから、類似の笛は古代からあった。いまは雅楽尺八と呼ばれているもので、奈良時代頃から楽器として使われていた。正倉院に現物が保存されているが、平安時代には使われなくなったという。その後、様々な形の竹の縦笛がつくられ、はやり歌に合わせて演奏された時代はあったが、虚無僧の尺八だけが伝えられたのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820395 |