昆布
【こんぶ】
昆布は本当に薄毛に効くのか?
近頃薄毛が気になって……と、せっせと海草を食べているという人も少なくないだろう。昔から「昆布を食べればハゲにならない」などといわれるのは、昆布や若布などに多量に含まれているヨウ素(ヨード)が脱毛に関係しているといわれているためだ。ヨウ素は代謝機能や成長機能に重要な働きをする甲こう状じょう腺せんホルモンの合成に欠かせない成分であり、ヨウ素が不足すると体力低下、心身成長障害、脱毛、皮膚異常などの症状をひきおこす。体内ミネラルとしては体重六〇キロの成人でおよそ一〇ミリグラムと少ないが、とても大切な役割を果たしているのだ。摂取されたヨウ素はそのほとんどがホルモンを分泌する甲状腺、つまり喉のあたりに集まっている。海に囲まれた日本ではヨウ素を多く含む海藻類や魚介類をよく食べるため不足することはあまりないが、内陸の国などではヨウ素不足は深刻な問題になっている。実は日本はヨード産出量世界第二位(一位はチリ)、埋蔵量は世界一といわれ、世界各地へ輸出もされているのだ。さて、このヨウ素が薄毛に効くかといえば、実はそれほどの効果はないようなのである。髪の毛は遺伝的要素の影響を強く受けるほか、体内の男性ホルモンが深く関わっている。したがって、昆布をたくさん食べてヨウ素の摂取量を増やすことは、必須ミネラルが保たれるので、髪の毛に悪い効果を与えることはないが、髪の毛を増やすというわけにはいかないようだ。なお、ヨウ素は人体に必須のミネラルとして働くほか、写真感光剤や液晶表示板の偏光フィルムなど、多くの工業製品に欠かせないものとして使用されている。また、除菌作用が強いことから、ヨードチンキやうがい薬など医療の分野や水道、プールなどの除菌剤としても使われている。温泉の成分としても認められていて、ヨウ素の主産地千葉県や宮崎県をはじめ、全国各地にヨード温泉があり、「美肌の湯」などとして親しまれている。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820333 |