コイ
【こい】
コイには、胃がない
全国各地、観光地の池やお堀など、少しくらいよどんだ水のなかでも逞しく生きているコイ。観光地で、「コイの餌」なるものを買って投げ入れてみると、いつもものすごい勢いで口を開けて群がってくる。実はコイには胃がない。だからコイは食い貯めができず、一日中食欲が旺盛なのだ。魚の胃腸は、概して単純。もともと魚類の食道は一般にあまり発達しておらず、ほかの魚ではのどからすぐに胃に到達してしまう。だが、コイ類やサンマなどは、この胃が退化してしまってないのだという。ほかの普通の魚は、胃と腸のところに「幽門垂」と呼ばれる行き止まりの袋があり、餌の消化と吸収のほか、貯蔵もおこなっている。この幽門垂は魚の種類によって違いがあるので、分類にも役立っているというから、魚にとって重要な構造なのだが、この幽門垂もコイ類にはない。コイは食道が直接、腸につながっており、食道と腸で消化しているのだ。したがって腸は普通の魚より長くできているが、だからこそコイを釣ってそのまま調理しようとすると泥臭い。コイはもともとアジアの温帯、熱帯に生息していたが、繁殖力も高いので、移植などにより現在では世界中に分布している。日本では観賞用に開発された品種も多く有名だが、世界の淡水魚のなかでは、重要な食用魚の一つでもあり、各地で養殖もされている。日本では、洗い、鯉コクなどが有名だが、需要が多いのは中国で、中華料理には欠かせないといってもいい料理食材なのだ。自分で調理するときは、きれいな水に泳がせて、泥はきさせることを忘れずに。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820287 |