ゲノム
【げのむ】
実は定義があいまい!?ドイツ語「ゲノム」の本当の意味は?
ゲノムを簡単に説明すると、生物の持つ遺伝情報のすべて、ということになる。人間の場合はこれをヒトゲノムと呼び、そこには三万もの遺伝子が存在することがわかっている。ゲノムはドイツ語「Genom」を日本語読みしたもので、英語では「genome」、「ジーノウム」と呼ぶ。「gene」(遺伝子)と「chromosome」(染色体)を組み合わせた造語で、一九二〇年にドイツのハンブルク大学の植物学者、ハンス・ヴィンクラー博士が考案した。ヴィンクラー博士は、ゲノムを「配偶子が持つ染色体の一組」と定義したが、一九三〇(昭和五)年に、日本の木原均博士が小麦の研究を通して、「ある生物をその生物足らしめるのに必須な遺伝情報」として概念的に定義しなおした。木原博士の名言に「地球の歴史は地層に、生命の歴史はゲノムに刻まれる」というものがある。ゲノムの本来の定義は「細胞内の遺伝情報の総体」といえる。しかし、遺伝子と染色体を組み合わせた造語ということもあり、「ゲノム=染色体」または「ゲノム=DNA」という考え方もある。実際に遺伝情報のほとんどは染色体に含まれており、遺伝情報のほとんどがDNAに記されているからである。また、染色体以外にも遺伝情報を含んでいるミトコンドリアや葉緑体といった細胞小器官もあり、それらを含めてゲノムとする場合もある。このように、ゲノムの定義は非常にあいまいな部分が多い。二〇〇三年四月には、一九九一年から日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、中国の六カ国共同で進められてきたヒトゲノムの解読が完了した。その結果を踏まえ、遺伝についてさらなる研究がすすめば、今後ゲノムの定義も厳密なものになっていくだろう。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820278 |