乙女の祈り
【おとめのいのり】
夭逝した作曲家のほんの数曲のなかから大ヒット
モーツァルトやバッハ、シューベルト、ベートーベンなど、数多くの楽曲を残して、後世にもその名を残す大作曲家といわれる人たちに対して、その名は知られていないが、たった一曲の素晴らしい楽曲を残してこの世を去った作曲家もいる。ピアノ曲で有名な『乙女の祈り』という曲を書いた、ポーランド人のテクラ・バダジェフスカ(一八三四?六一)という女性である。二七歳という若さでこの世を去ってはいるのだが、一五〇年以上たったいまでも、自分の作曲した曲が弾きやすいピアノ曲として人々に親しまれていると知ったら、どんなに嬉しいことだろう。『乙女の祈り』は、なんと一八歳のときに作曲したものだそうだ。しかし生涯で作曲した数は、サロン風の曲を三四曲のみ。つくった数と作風からいうと、プロの作曲家というよりはアマチュアっぽかったのではないかという見方が強い。その、アマチュアの少女の作品がどうしてここまで世の中に広まったかは定かではない。ただ一説によると、あるとき、パリの音楽ニュース雑誌『レヴュ・エ・ガゼット・ミュージカル』の編集者の目にとまり、この雑誌の付録として、楽譜が紹介されたそうだ。すると、サロン風の楽曲がうけて大評判になったという。内容的には、短い序奏に続いてあらわれる主題を五回ほど繰り返すという単純な構造のため、ピアノ学習者などに好まれて、世界中に広まった。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820129 |