運命
【うんめい】
ベートーベンといえば「運命」というのは、日本とドイツだけ
ベートーベンの代表作といえば『運命』。即答できる日本人がかなりの確率で多いと思うが、実は、この『運命』というタイトル、というか勝手にタイトルとして成立してしまっている呼び方はまったくの俗称である。実際は『交響曲第五番ハ短調、作品六七』というのが正しい曲名である。仮に『運命』が俗称だったとしても、どこに行っても通用するならいいのだが、そうではないようだ。私たち日本人にとっては常識のように思える「運命」という呼び方は、世界的にはめずらしくて、日本とドイツぐらいなのだという。では、どうして「運命」と呼ばれるようになったのかというと、その昔、「ジャ・ジャ・ジャ・ジャーン」の部分を作曲した主題について弟子のシントラーが尋ねたところ、ベートーベン自身が「運命は、このように扉を叩くのだ」といったということから「運命」と呼ばれるようになったという説が有力。いくら「音楽は世界共通の言語」などとはいっても、タイトルに関しては、有名曲たりとも世界共通とは限らないのだ。アメリカに行って英語で「ベートーベンのディスティニー(運命)っていいですよね?」といっても、「?」となってしまうというわけだ。ちなみにあの有名な「ジャ・ジャ・ジャ・ジャーン」の部分、ベートーベンがつくり出したのではないという説がある。一つは、同時代の作品や以前の作品に同じフレーズがあるというもの、もう一つは、彼の祖父であるルートヴィヒ・ヴァン・ベートーベン(ベートーベンと同名)の作品のなかに同じフレーズがあるという説とがある。いずれにしても、ベートーベン自身が作曲した『交響曲第五番ハ短調、作品六七』のなかにある「ジャ・ジャ・ジャ・ジャーン」が、世界中で最も愛され、最も感動を与えていることだけは間違いない。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820094 |