喪服
【東京雑学研究会編】
§喪服はもともと白かった?
葬儀に参列するときは、とにかく黒で装うもの。男性ならブラックスーツ、女性なら黒の三つ紋などの和服か、やはり黒のスーツが正式である。
最近では、葬儀も簡略化されて、会社の帰りなどに駆けつける参列者も多くなった。そんなときは、ふだんのスーツのネクタイを黒に替えるか、黒の喪章で弔意を示す。バッグや靴も、もちろん黒である。
このように、喪服なら黒というのが当たり前になっているが、実は喪服が黒になったのは、意外に新しい時代のことなのである。
古代の喪服は、麻や、藤の皮の繊維で織った布を、染めずにそのまま仕立てたものだった。これは、白っぽい生成りの色をしており、「素服」または「不知古路毛」と呼ばれていた。
江戸時代になっても、男性は麻の裃、女性は白無垢の着物が喪服とされていたので、白、または白っぽい色をしていた。
明治時代になり、洋装が普及し始めると、上流階級の男性は、あらたまった席では黒いフロックコートやモーニングを着るようになり、女性も黒留袖を着るようになった。それでも、昭和一〇年代までは、白い喪服が一般的だったのである。
ところが、第二次世界大戦が起こり、戦中・戦後の物不足の中で、絹の白無垢は手に入らなくなった。そこで、代用として黒を喪服として着る人が増えた。戦後になってもその習慣が続いたまま、現代に至っているのである。
それまでも、黒い服は礼装として認められていたので、礼を失することにはならないし、ネクタイや小物さえ変えれば、葬式にも結婚式にも参列できるので、便利だったのである。こうして、喪服といえば黒というのが、すっかり定着したのである。
ちなみに、かつては、近親者ならば喪に服している間は、ずっと喪服を着ているものだったが、近年では、葬儀やそれにかかわる儀式の日に着用されるだけとなっている。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670930 |