モンシロチョウ②
【東京雑学研究会編】
§モンシロチョウは飛んで海を渡ってきた?
春の訪れを告げる愛らしいモンシロチョウは、日本でも広く親しまれている。
古くは、南ヨーロッパに生息していたモンシロチョウだが、現在では、北アメリカからアジア、オーストラリア、ニュージーランド、ハワイまで、広く分布している。
日本で、別名「菜の花蝶」と呼ばれているように、ナノハナやダイコン、キャベツなど、アブラナ科の植物が大好物である。
そして、モンシロチョウが、これほど広く分布するようになったのは、キャベツなどの野菜に紛れて、船積みされたためという説を、アメリカの昆虫学者が唱えている。
そもそもキャベツは、地中海やヨーロッパの西海岸に自生していた植物だが、人間の手によって栽培され、次第に普及していった。大航海時代の一六世紀以降には、ヨーロッパから、北アメリカや中国にまで広がった。
キャベツが日本に伝来したのは、一八世紀初頭といわれているが、このとき、モンシロチョウもキャベツと一緒に足並みをそろえるようにして、やってきたのかもしれない。
また、モンシロチョウが、自力で海を渡ったのではという説もある。
ひらひらと飛ぶ小さなモンシロチョウが、そんな大飛行をするとは考えがたいが、一羽では頼りなく見えるモンシロチョウも、ときには大群を作って移動する習性がある。
一九八八年の七月一九日から三日間、中国内陸部の甘粛省の興隆山で、「蝶雪」と呼ばれる現象が見られた。モンシロチョウとおぼしきチョウが、長さ五キロにも達する巨大な群れとなって、幅約一〇〇メートルの渓谷を埋め、約三時間にわたって、まるで雪のように空を覆いつくし、流れるように移動したという。
このような群れの一部でも、偏西風に乗ったとすれば、日本列島にたどり着くことも可能かもしれない。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670932 |