哺乳類の処女膜
【東京雑学研究会編】
§処女膜があるのは人間だけではない
現在では、女性の処女性というのはそれほど重要視されることはない。しかし女性の膣口にあるこの粘膜の膜が、男性との性交渉をもつことで「破れる」とされたことから、結婚に際して純潔の証としての意味を持ち、処女膜再生手術などというものが大真面目に行われた時代があったのである。
だいたいが、処女膜は本当のところ膜で膣を保護しているわけではなく、ただのヒダで開口部はあり、なんらかの機能を持つわけでもなく、呼吸や消化のような生命維持に欠かせない役割を果たしているものでもない。無用の長物なのだ。
哺乳類における処女膜は、一般には胎児期には見られるものの、それは成長につれて開き、誕生のときには見られなくなる。ところが人間だけが、完全に開ききらないまま生まれてくるため、それが生殖器官であったことも含めて、ことさら人間が進化した高等哺乳類であることの証明のようにいわれ、神聖視されるようになったのだ。
その意味からいうなら、人間よりももっと進化した哺乳類は、ひじょうに発達した処女膜を残しているモグラということになる。モグラのメスの処女膜ともいえる陰門は、毛の生えた皮膚で覆われていて、ほかの皮膚と見分けがつかない。
モグラのオスは的確にその位置を見分け、みごとに切開に成功して種の保存に努めているというわけだ。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670884 |