ノルアドレナリン
【東京雑学研究会編】
§怒ると本当に頭に血が上るのか?
人間は感情の動物と言われる。快、不快、喜びや悲しみ、怒りの感情に包まれ、同時に、それらをうまくコントロールしながら、日々の生活を送っている。
人間の場合、本能的な行動の中枢を、知性や理性の中枢がコントロールしているので、本能のままにあれもしたい、これもしたいという欲求が抑えこまれることが多い。本能的な欲求とは、食欲や性欲に限られているわけではない。愛や名誉といった社会的な欲求まで、さまざまなレベルのものを含む。したがって、理知によるコントロールと本能的な欲求との間に葛藤が生まれ、快、不快、喜び、悲しみ、怒りといった感情の表れとなる。
怒りの感情におそわれたとき、人間の頭の中はどのようになっているのだろう。血圧を測ってみると上昇しているし、脳の血流量は増加しているという。「頭にきた!」とか「頭に血が上る」というのは、単なる比喩ではなく、本当のことだったのだ。
怒りの感情は、脳の視床下部への刺激と関係があるらしい。猫や犬も怒りを表す。猫の脳の視床下部を電気刺激した実験によると、猫は、爪を立て、毛を逆立て、うなり声を出し、怒りを表したという。
脳の神経伝達物質ノルアドレナリンは、別名「怒りのホルモン」とも言われる。何かの原因で怒りの感情が生まれたとき、脳幹のA6神経という神経核から分泌される。脳全体の中でも最大の神経であるA6神経は、脳を強く覚醒させ、活動させ、攻撃性を発揮させる。特に怒ったときは、ノルアドレナリンが多量に分泌する。その結果、血圧上昇、脳血流量の増加となる。
ノルアドレナリンは、全身の自律神経にもひろく分泌されるので、全身を覚醒させ、活動が活発になる。激怒している人に、近づくなかれ! 何が飛んでくるかわからない。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670759 |