ゴム
【東京雑学研究会編】
§ゴムはなぜ伸び縮みするのか?
伸縮自在の固体であるゴム。柔らかくて押せばへこむし、引っ張れば伸びる。しかも、手を離せば、またもとの状態に戻る。ゴムのこの性質はどのようにしてできたものなのだろう。
どの固体にも弾性がある。固体は原子または分子からできていて、原子または分子の間には強い引力が働いている。だから、引っ張ろうとすると強く抵抗する。これが固体の持つ弾性の原因というわけ。
ゴムの場合、もとの長さの五~六倍も伸びると言われている。原子または分子間の引力だけで、もとの五~六倍も伸びる弾性が生まれるとは考えにくい。原子または分子が引きちぎられてしまうからである。では、何がゴムの弾性を生み出しているのであろう。
炭素原子には、炭素原子どうしがいくつもつながって長い構造を作る特徴がある。例えば、木炭、ダイヤモンド、グラファイト(鉛筆の芯や乾電池の電極)は、炭素だけが長くつながったものだ。ところが、炭素原子がほかの原子とつながるときは、平面的な結合ではなく、立体的な結合になる。
天然ゴムは、イソプレンという分子が多くつながったポリイソプレン分子からできている長い鎖状の高分子だが、この高分子は、炭素原子と水素原子からなるジグザグ構造、すなわち、立体的な結合をしている。
鎖の各部は、分子運動による屈曲した糸屑状になっていて、これを引っ張ると伸びるが、鎖各部の分子運動により、再び元の屈曲した糸屑状に戻ろうとする。これが五~六倍も伸びるゴムの弾性の秘密である。
分子運動は、温度が高いほど活発になり、弾性はさらに強くなる。
普通のゴムは、硫黄を加えて加熱した「加硫ゴム」と言われるもので、硫黄が、絡み合った高分子のところどころをつなぐはたらきをしている。こうすることで、ゴムの骨格の構造の強度が増し、弾性度もいっそう増すのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670355 |