写真
【東京雑学研究会編】
§三人で写真を撮るとなぜいけないのか?
ジンクスにはいろいろあれど「死」と関係するものは、ちょっと後味が悪いものである。「三人で並んで写真を撮ると、真ん中の人が早く死ぬ」などというのもその一つだ。
迷信とはわかっていても、やはり進んで真ん中には行きたくないものである。では、なぜこのジンクスは生まれることになったのだろうか。
このジンクスが生まれたのは、なんと幕末である。写真が西洋から日本に伝わってすぐに、生まれたジンクスなのだ。
当時の日本には年長者を立てるという礼儀があった。三人並んだときの真ん中は主役の座であり、年長者が立つ場所である。それを無視して若年者がそこに立たないよう戒めたのが、このジンクスの最初なのである。つまり、年長者をさしおくような行為をすると、先に死んでしまうよということなのだ。
この怖いジンクスが生まれたのには、当時の人の恐怖も関係している。その自分の姿がそのまま写るという写真は今まで見たこともない文化だった。人々は興味と不安な気持ちで、これを受け止めていたのだろう。長崎で写真館がオープンしたときには「写真を撮られると命が短くなる」とデマが流れ、最初は誰も写真を撮りにこなかったという。
自分の姿をそのまま写すということは、魂を分割するようなもの。そこで、魂が吸われると思い込まれたのである。三人で写真を撮ると、中央にピントが合うため、その人だけはっきり写る。写れば写るほど魂が吸われると思われていたため「真ん中の人の命が短くなる」という迷信につながったのだ。
実際の写真の原理よりもデマや迷信の方がよく広がっていくもの。そのため、それを信じ込んで、今でもそう思い込んでいる人もいるわけだ。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670438 |